第3章

変化の言語

何かがどれだけ速く変化しているかをどう表現する?

第3章:変化の言語 ↗

傾きは速度

テオ: 「もっさり」「ぷるぷる」「落ち着く」ばかり言ってる。ジューンが正しい。それは雰囲気で、数学じゃない。ドローンがどれだけ速く変化しているかを正確に言う方法が欲しい。

ジューン: 第2章のドローン(Kp = 20 N/m)を再生して、じっくり見てみよう。

青い曲線は時間に対するドローンの高さ。速度とは1秒あたりに高さがどれだけ変わるか。グラフでは、ある瞬間に曲線がどれだけ急かということ。曲線に定規を当てて、1点だけで接するようにする。その定規が接線で、その傾きが速度。

ミカ: 簡単だよ。ドローンは山の一番上で一番速い。だって一番高いところだから!

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テオ: カーソルを山の頂上に置いてみて。接線は平ら。そこでは速度はゼロ!

ミカ: あ。ドローンは上昇して、上向きの速度を使い果たし、頂上で一瞬止まって、また落ちていく。高いことと速いことはまったく別なんだ。

一番速い瞬間は実は上昇の途中、曲線が一番急なところ。そして曲線が下に向かうとき、傾きは負。ドローンは落下している。

この「ある瞬間の傾き」に名前がつく。それが微分。高さの微小な変化を、かかった微小な時間で割ったものとして書く。記号で書いた Δh/Δt\Delta h / \Delta t は「高さの変化 ÷ 時間の変化」と読む。ギリシャ文字Δ(デルタ)は「〜の変化」の略だ。

速度=dhdt≈高さの変化時間の変化(ごく短い時間で)\begin{gathered}\text{速度} = \frac{d\out{h}}{dt} \\[1em] \approx \frac{\text{高さの変化}}{\text{時間の変化}} \\[1em] (\text{ごく短い時間で})\end{gathered}

速さのルール

ジューン: コーヒーは最初は速く冷めて、そのあとすごくゆっくり冷める。室温にはなかなか届かない。

テオ: 冷める速さはあとどれだけ進むかに依存するから。すごく熱いマグカップは熱をどんどん失う。ほんのり温かいマグカップはほとんど失わない。

それを傾きのルールとして書いてみよう。コーヒーの温度は T、部屋は 20 °C:

dTdt=−T−T室温τ\frac{d\out{T}}{dt} = -\frac{\out{T} - \sp{T_{\text{室温}}}}{\tau}

マイナス記号は「部屋より熱ければ冷める」という意味。数値 τ(タウ、時定数)はマグカップがどれだけもっさりしているかを表す。こう考えてみよう:τは、コーヒーが最初の冷める速さのまま冷め続けたら、室温に届くまでにかかる時間。普通のマグカップなら τ ≈ 10分。

ここで謎だ:このルールは今の傾きしか教えてくれない。それから曲線全体を導けるだろうか?手作業で作ってみよう:傾きを見て、しばらく(Δt)それに沿って進み、新しい傾きを見て、また進む…

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ジューン: 12回の小さなステップは退屈だ。15分刻みで進めればすぐ終わる。

ジューン: …待って。コーヒーが−15 °Cになってる?!暖かい部屋で凍ったのか?

テオ: ルールは問題ない。問題はステップだ。一度の巨大なステップでは、ステップの始めの急な傾きを、それが当てはまらなくなった後もずっと使い続ける。そのまま室温を飛び越えてしまう。

どれだけずれるかは正確に見える。各ステップは室温との差を同じ数だけ掛ける:

差次=(1−Δtτ)⋅差\text{差}_{\text{次}} = \left(1 - \frac{\Delta t}{\tau}\right) \cdot \text{差}
  • Δtがτより小さい:係数は0と1の間。差は縮まり、オーバーシュートしない。
  • Δtがちょうどτ:係数は0。1ステップでぴったり室温に着地する。最初の速さを1τの間ずっと保ったのと同じだ。
  • Δtがτと2τの間:係数は負。コーヒーは室温より下にオーバーシュートし、次に上に、振動しながら揺れは小さくなる。
  • Δtが2τより大きい:係数は−1より小さい。揺れはステップごとに大きくなる。コーヒーがめちゃくちゃだ。

ミカ: これがシャワーだ!古い情報に大胆に従うと揺れてしまう。

Δtを小さくして滑らかな曲線をオンにしよう。手で作った点はその曲線上にぴったり乗る。この滑らかな形は指数減衰と呼ばれる。次の章で詳しくやる。

本物のコーヒーは最初の速さを保たない。差が縮むにつれて傾きも小さくなる。だから1τ後に埋まるのは差の約63%だけで、全部ではない。下のものさしでは、破線が「最初の速さのまま」、曲線が実際に起こること。63%はどこから来るのか?第4章で組み立てる。

時定数はものさし

まず予想しよう! 1つの時定数の後、コーヒーは室温との差の63%を埋めた。2つの時定数の後、差はどれだけ埋まる?

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1τ後:63%。2τ後:86%。3τ後:95%。正確にそこへ到達することは決してないけど、4〜5τくらい経つと誰にもわからなくなる。タンクに切り替えてみよう。タンクには、1.2 mの水位の大きな貯水槽からパイプで水が入る。水を押すのは水位の差だから、タンクが追いつくにつれて流れは遅くなる。ルールは同じ(「変化の速さは満杯までの残りに比例する」)で、形も同じ。

ジューン: つまりτは備え付けのものさしなんだ。τを教えてくれれば、それがマグカップでもタンクでもドローンでも、どれだけ鈍いかがわかる。

新しい言葉

微分
ある瞬間における曲線の傾き:何かがどれだけ速く変化するか。dhdt\frac{dh}{dt}またはh˙\dot hと書く。
一次系
変化の速さが、向かっている先からどれだけ離れているかに比例するもの(コーヒー、タンク)。その曲線は指数関数。
時定数τ
一次系が最初の速さのまま進んだら、到着するまでにかかる時間。実際には、その時間で残りの距離の63%を進む。

逆向きに考える:面積を足し合わせる

テオ: 傾きは高さを速度に変える。じゃあ逆向きはできる?ドローンのセンサーが速度しか教えてくれないとしよう。それはどこにいる?

一定の2 m/sで3秒間飛べば、6 m上昇する:速度×時間。速度対時間のグラフでは、これは長方形の面積になる。速度が変わり続けるときは、時間を細い帯に刻み、各帯を長方形として扱い、全部足し合わせる。

カーソルを動かして、影のついた面積が大きくなるのを見てみよう。下の青い曲線は、単にこれまでの面積だ。速度がゼロを下回るところ(ドローンが落下する)では、面積は負として数えられ、高さは下がる。

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ミカ: 蓄積された面積は、実際の高さにぴったり一致する。傾きは一方へ連れて行き、面積は連れ戻す。

この「面積を蓄積する」操作は積分と呼ばれる。記号∫は引き伸ばしたSで、和(sum)のS:細い短冊の和だ。小さなdtdtは各短冊の幅で、00とttはどこから足し始めてどこで止めるかを表す:

h(t)=h(0)+∫0t速度  dt\out{h}(t) = \out{h}(0) + \int_0^{t} \text{速度}\;dt

傾きの傾き

ミカ: 第1章は私たちに約束をしていた。ドローンの式には、hhの上に点が2つあった。点1つは速度。じゃあ2つ目は?

速度もそれ自体が曲線だから、傾きがある。速度がどれだけ速く変わるか。それが加速度、傾きの傾きだ。下には同じ飛行が3回:高さ、その傾き(速度)、そしてその傾き(加速度)。全部ひとつの時間カーソルでつながっている。

まず予想しよう! 山の一番上では速度はゼロ。そこでの加速度は?

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ミカ: ゼロって言っちゃった!でも頂上では、速度の曲線が一番急な下り坂になってる。速度ゼロは押す力ゼロじゃないんだ。

点2つは傾きの傾きを意味する。傾きの書き方にはもう1つ、プライム(学校では「ダッシュ」と読むことが多い)という小さな印を使う方法がある:傾きはh′h'、傾きの傾きはh′′h''。書き方は3つ、考え方は1つ:

新しい言葉

h˙=h′=dhdt\dot h = h' = \frac{dh}{dt}
hhの傾き:その速度。
h¨=h′′=d2hdt2\ddot h = h'' = \frac{d^2 h}{dt^2}
傾きの傾き:加速度。
Δ\Delta
「〜の変化」:Δt\Delta tは時間の1ステップ。
∫\int
引き伸ばしたS、「和」(sum)のS:面積を足し合わせること。

これで第1章の式が文のように読める。質量×加速度は、押しているものすべての合計:上向きの推力、下向きの重さ、そして速度に逆らう空気抵抗。これがニュートンの運動の法則だ。1項ずつ見てみよう:

0.5 h¨⏟質量×加速度=T⏟推力−4.9⏟重さ−1.0 h˙⏟空気抵抗 × 速さ\underbrace{0.5\,\ddot{\out{h}}}_{\text{質量}\times\text{加速度}} = \underbrace{\eff{T}}_{\text{推力}} - \underbrace{4.9}_{\text{重さ}} - \underbrace{1.0\,\dot{\out{h}}}_{\text{空気抵抗}\,\times\,\text{速さ}}

テオ: つまり、コーヒーのルールは速さについてのルールで、ドローンのルールは加速度についてのルール。傾き1段ぶん深いんだ。だからドローンはオーバーシュートして揺れるのに、コーヒーは決してそうならないのかな?

ジューン: そうに決まってる。コーヒーの速さは差にただついていくだけ。ドローンの速度はためて、使い切る必要がある。だから目標に着いたときも、まだ動いていられるんだ。

ここまでにわかったこと

わかったこと

  • 微分はある瞬間における曲線の傾き:どれだけ速く変化しているか。高いことと速いことは別物。
  • 「熱いほど速く冷める」といったルールは曲線全体を決めてしまう:指数関数的な近づき方。
  • 時定数τはものさし:τ後に63%、2τ後に86%、3τ後に95%。
  • 大きすぎるステップで曲線を組み立てると、シャワーのときと同じように、偽のオーバーシュートや揺れが生まれる。
  • 傾きの傾きは加速度:h¨\ddot h、またはh′′h''。第1章のドローンの式は、それについてのルールだ。
  • 積分は面積を蓄積し、微分を打ち消す。

テオ:「コーヒーの曲線には面白い性質があった。傾きがいつも、まだ残っている差に比例していたんだ。じゃあ、傾きが自分自身に比例する曲線ってあるのかな?」

第3章:変化の言語 ↗